「工芸」と「ハンドメイド」って似ていると言われると驚かれるでしょうか。工芸は敷居が高いとか、特別な行事のときに使うものとか、古くさいとか考えていませんか?
工芸品はそもそも手作りされる実用品
辞典で“工芸”を検索してみると、「実用品としての機能性に、美的装飾性を加えて物品を作り出すこと」(『スーパー大辞林』)、「美術的な実用品を作ること」(『デイリーコンサイス国語辞典』)という言葉が出てきます。
工芸品というのは、もともと実用品としての機能性をベースに、美しさを追い求め手作りされたもの。
華やかな美しさの品はもちろん、シンプルな美しさや、伝統的な模様や形の美しさなど、その美しさはさまざまです。
機能性を重視した結果の美しさ、遊び心を加えた楽しさ、技術を尽くした華やかさ……。生活の中にあると心が豊かになる実用品。それが工芸です。
民芸<工芸<ハンドメイド
工芸とよく似た言葉に “民芸”があります。柳宗悦の造語ですが、昔から一般の人々が日常的に使って来た実用的な工芸品や、庶民生活の中から生まれたその地方独特の工芸品を指します。
使い勝手を追求した食器や、素朴さが残る竹細工・わら細工の品が解りやすいでしょうか。
ただ、竹細工にしろ、わら細工にしろ、もともとは各家庭で作ってきたもの。その中で、名人と呼ばれる人たちの創る物は、機能美のほかに美しさも兼ね備え、現在では工芸品として美術館に飾られたりもします。
そして、“ハンドメイド”とは、手作りの品の総称。家族のために、友人のために手作りする品もハンドメイド作品。工芸品も手仕事で創った物は、ハンドクラフトと言いますから、ハンドメイドに含まれるでしょう。
クリエーター≦工芸家
では、工芸家とクリエーターは違うのでしょうか。綾の工芸家たちは、どちらかというと“職人”であろうとします。
クリエーターも職人も、材料にこだわり技術を極めていくとか、お客さまを考えて仕上げをするとか、多くの共通する部分があります。考えれば考えるほど、違いが分からなくなるほどです。
では、クリエーターではない工芸家は存在するのでしょうか。答えは“YES”。
綾町工芸コミュニティ協議会には、現代の名工が3人います(2021年7月現在)。その中の一人、熊須碁盤店の 熊須健一 氏は、3度目の正直で現代の名工になりました。
素晴らしい逸品を作っているのに、どうして名工になれないんだろうと不思議に思い、尋ねたことがあります。その答えは、
「僕らは美術展とかに出せんかい(出せないから)、そういう権威の評価がないとよ。昔の名品にどれだけ近づけて作れるかじゃかいね」
碁盤や将棋盤というのは、“型どおり”に作るのが要求されます。決してクリエーターになれない工芸家がここにいます。
考えれば、染織家も陶芸家も昔ながらの型や技法を取り入れつつ、ゆとりの部分で創造(クリエイト)しているに過ぎません。
基本の型をひたすら作り続けられる人が、工芸家、職人と言えるのでしょう。
綾町の工芸品はハンドメイド(手仕事)です。
綾町工芸コミュニティ協議会には40ほどの工房が参加していますが、すべてが手作りをする工房です。
これは、前身のひむか邑が大量消費に背を向け、自然の中で人の手が作り出せる物にこだわったというのが大きいでしょう。
その工房が一堂に介する「綾工芸まつり」は、最近はやりのハンドメイドマーケット、クリエーターズマーケットの先駆けといってよいかもしれません。
毎年変わらない定番品から、クリエイティビティなものまで、見て歩くだけでも楽しいものです。
工芸品は、モダンにもナチュラルにも生活をお洒落に楽しく彩ってくれるものばかり。
ただ楽しむだけでなく、工芸の“へぇー!そうなのか”を本HPで伝えてまいります。